2013年9月21日土曜日

180.飛鳥から斑鳩のお月見

「アカシア紀行・俳句」2013年9年20日(金)     前へ   次へ

  中秋の十六夜の日、いつものメンバー6人で、奈良県・明日香村の
葛(くず)神社、気都和既(きつわき)神社から、斑鳩の上宮(かみや)
遺跡公園でお月見茶会を楽しみました。

 葛神社は明日香村・石舞台の東の阪田地区の棚田の上にある神社です。

 我々は飛鳥夢販売所で2時頃集合し、阪田地区へ行きました。
右折の交差点を間違えて集落の中に入ったため、車幅一杯の道を
訪ねながら、葛神社に着きました。

 葛神社は飛鳥の大きな棚田の上の方にあり、この地区の産土神のようですが、
由緒書きなどはありません。

 見晴らしの良い広い坂道から狭い参道を下りると、木々の中に、
神社が見えました。
参道の土手には、彼岸花、ツルボ、イヌコウジュ、などが咲き、
コオロギや草雲雀が鳴いています。

 拝殿は割拝殿で、真中に土間があり、土間に地炉が掘ってあり、
炭が残っていました。拝殿は掃除が行き届いており、壁には雨乞い踊りや
青龍の奉額、九頭龍と書いた額が掛けられていますが、
本殿の障子は所々破れていました。

 葛神社あたりからは、飛鳥の棚田がよく見え、畦には電柵に仕切られたり、
逆に電柵を隠したりして彼岸花が咲いていました。

       拝殿の地炉に秋の蚊低く飛ぶ      常朝

       産土の参道狭し彼岸花         常朝

              (葛神社:クリックで拡大:以後同じ)        
              (葛神社本殿)
              (棚田と彼岸花)
              (ツルボ?)
              (イヌコウジュ?)

 石舞台の東を流れる細川に沿う道(飛鳥-多武峰線)に戻り、
2キロほど東の気都和既(きつわき)神社を訪ねました。

 気都和既神社は、明日香「上(かむろ)」地区の産土神社で、
3つの谷川の合流点にあります。
「もうこの森」とも言われるそうですが、
大化の改新の折、鎌足が蘇我の入鹿の首をはねたあと、
その首に追いかけられてこの杜に逃げた時、「もうこない」と
安心したので「もうこの森」といわれたそうです。

 長い古い拝殿と、本殿が2つあり、説明板によると気都和既(気津別)
の命と、天津児屋根の命が祀られているようです。

 境内にいると、高い木々の上から秋らしい山風が降りてきました。
法師蝉が鳴き、まさに秋気満つ感でした。
谷脇に捨てられていた注連縄の稲の籾から早苗が10センチ以上伸びていました。
 神社の谷の上には新道があり、高い道路からは、芒の向うに
山に囲まれた飛鳥の棚田が見えました。


       谷三つ交わる杜に秋の水     常朝

       谷の杜に佇てば降りくる秋の風  常朝

             (気都和既神社)             
              (気都和既神社説明板)
              (気都和既神社本殿)
              (「上」道路から飛鳥)

 その後、国道169号線を北上、24号線、県道36号線から大和中央道(249)
を北上して、郡山城の西のレストラン「弁慶」で早い夕食をいただき、
富雄川沿いから25号線経由で、斑鳩の上宮遺跡公園に移動しました。

 上宮遺跡公園は中宮寺東交差点の南、斑鳩東小学校の東側にあります。
着いた頃は7時前であたりは暗くなっており、公園の入口に迷いました。

 上宮(かみや あるいは じょうぐう)遺跡公園は、1991年に
宮殿クラスの建物跡が見つかった遺跡に作られた公園で、
毎年この時期に観月祭があります。

 公園内の円形広場の周囲は石段があるので、我々は、その西側に
シートや椅子を置いて、月見茶会を始めました。

 落ち着いた頃には満月(正確には十六夜の月ですが)がすでに公園の木々の
上に出ていました。
夜の野点(のだて)ですが、静かな公園で月を見上げながらお茶菓子と抹茶、
煎茶などをいただきました。

 月は地平に近いうちはやや橙色でしたが、上るにつれて白く輝きました。
月の上がり方は意外なほど遅く、ゆっくり、ゆっくりと空の散歩を楽しんで
いるようでした。庭園灯が明るすぎるほどでしたが、月が天上にくると、
あまり気にならなくなりました。
もちろん星はまったく見えません。
虫の声も聞きながらしばらく秋の夜を楽しんで8時半頃解散しました。
 その間、2組のカップルと単車の青年2人が公園に来ただけでした。


       上がるほど白くなりゆく今日の月  常朝

       満月に見えぬ星でもあるんだよ   常朝

       野点の泡見えずいただく月見会   常朝

            (上宮遺跡公園の名月)


 今年の猛暑を忘れて、天気に恵まれた秋らしい一日を飛鳥、斑鳩で
過ごすことができました。

2013年9月7日土曜日

179.宇陀市・室生・大野の磨崖仏から竜王渕

「アカシア紀行・俳句」2013年9年5日(木)     前へ   次へ

  九州の台風による連続4日の雨も止み、夕方やっと青空が見えた日、
いつものメンバー7人で、奈良県宇陀市大野の磨崖仏などを訪ねました。

 大野の磨崖仏は、宇陀市の宇陀川の岸の大岩に鎌倉時代に線刻された
大きな弥勒如来像です。

 我々は名阪国道・針テラスから南へ2.5キロほどの外の橋交差点を東南へ、
約4キロの165号線の緑川交差点を左折しました。
そこから1キロ東の室生寺入口交差点を右折、すぐ左折して川沿いの道を西へ
約500メートルほど行くと、向う岸に大きな岩の磨崖仏が見えてきます。
大野寺の駐車場に留めて、磨崖仏を拝観し川の辺を散策しました。
線刻のためお顔などは薄れていますが、大きな眉や細い目は笑っているように
見えました。


       磨崖仏細目に笑まふ秋日差      常朝

             (磨崖仏の写真を誤って削除しましたので、
       imakumanさんのきれいな写真などをご覧ください)
      (大野磨崖仏:imakumanさん撮影


 川の水量は先日来の雨のためやや増えていますが、澄んだきれいな水で、
糸トンボやセキレイが岸辺にいて、寺垣に仙人草が咲いています。
我々は何度も訪ねているので、今回は大野寺に入山せず、近くの海神社を
訪ねました。

 海神社は大野地区の産土神のようですが、何故か山国に海の神である、
豊玉姫を主神として祀っています。
比較的小さな神社のわりに立派な拝殿、長拝殿、舞殿があり、
海の神社らしく龍の彫物が金檻に守られて、舞殿の軒にあります。
紀の宮神社などの摂社もあり、全部で6対もの狛犬があります。
御手洗には鳥よけの網が三方に掛けてありました。
大きな神杉の元を見ると二樹がつながっており、
杜から時々、キー、キーというような鳥の声が聞こえました。

 そばの田では農夫の人が黙々と田草を引いていました。
左手には大野駅が近いので駐車場がありますが、廃業のようでした。
駅舎にはセキレイが飛んできて、線路の隧道には蝉の声が
うるさいほど響いていました。

       鶺鴒の駅舎に来たる室生かな   常朝

       御手洗に鳥よけの網水澄めり   常朝

            (海神社本殿:クリックで拡大:以後同じ)        
            (海神社の舞殿)
            (海神社の石段)

 その後、165号線を東に4キロほど走り、三本松の青葉寺を訪ねました。
165号線から北へ入る山道には案内板があります。
100メートル程登って右手へ鋭角の坂を登るとすぐに駐車場です。
青葉寺は日蓮宗の寺ですが、左手の猪垣を開けると谷道に出ます。
谷道を約150メートル程登って、青葉の滝を見ました。
敦盛の青葉の笛はこの谷の竹で作られたとのことです。
滝は高さ10メートル程ですが、三段ほどのなめらかな岩を落ちる、
美しい滝です。日差が当たるとさらに美しいでしょう。

 滝下も岩のため滝壺はありませんが鳥居と不動明王のお堂がありました。
山寺のため、境内は狭いながら百日紅、秋海棠、ヤブランなど、土手には
ツリガネニンジンなどが咲いていました。
寺の下の5、6段の棚田は一枚を除き、稲刈りが済んで稲架が並んでいました。

       水音の響きさやかに秋の滝    常朝

            (青葉寺)
            (青葉の滝)


 165号線の三本松駅のそばの、道の駅「宇陀路室生」で昼食をいただいた後、
向渕(むこうじ)の竜王渕を訪ねました。
ここは去年も訪ねた山中の大きな池です。
伝説などは、アカシア紀行158 毛原廃寺跡から笠間街道・竜王淵 に
記入しました。(2012年9月22日)

 今回も向渕のバス停近くの交差点から西南へ1キロ、案内板のある角を
右折して100メートル程の駐車場に留めて、散策しました。

 雲は低く垂れていますが雨の気配はなく、四阿に立つと秋風が来ました。
木道を歩くと、周囲の葦には葦の花が咲き、溝萩が咲いています。
池の辺には、ゲンノショウコ、クワイの花、 などが咲いていました。

 また、去年と同じく、奥の堀越神社の岸辺には、
10センチ以上もあるオオマリコケムシのかたまりが不気味に、池の中の枝に、
いくつもついて沈んでいました。

       雲低き竜王渕に葦の花      常朝

       竜王渕の暗き水面に糸蜻蛉    常朝

            (宇陀路室生道の駅)
            (竜王渕)
            (竜王渕2)
            (オオマリコケムシのかたまり)

 名阪国道針ICの針テラスにある、レストラン「メリカート・ロッソ」で
小句会後解散しました。
 
 早くも室生路の秋を感じることができました。

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