2014年6月29日日曜日

194.東吉野・天好園から水分神社

「アカシア紀行・俳句」2014年6月28日(土)     前へ   次へ


 梅雨曇りのやや涼しい土曜日、いつものメンバー6人で、
奈良県吉野郡東吉野村の天好園から近くの水分神社を訪ねました。

 車で桜井市の三輪大社に集合し、宇陀市の女寄峠、拾生(ひろお)から、
国道166号線を東吉野村の鷲家口を経て、新木津(こつ)トンネルを
出て、100メートルほどの歌碑前で、車を留めました。
この辺りは過去に何度かきていますが、山に囲まれた美しい清流のある
静かなところです。

(以前のブログは、アカシア紀行42アカシア紀行106アカシア紀行130です)

 歌碑は前登志夫の

 朴の花 たかだかと咲くまひるまを みなかみにさびし 高見の山は

 です。

 ここからは高見山が雨に煙って見えます。
朴の花はすでに終わって、10センチほどのラグビーボール状の青い実が
いくつか付いていました。

              (朴の実:クリックで拡大:以後同じ)

 その後小雨がぱらつく中を、松本大橋手前で左折して、平野川に沿って
28号線を3キロほど北上、天好園に着きました。
着いた頃は雨も止んで、しばらく散策できました。
数本ある山法師が白い花を沢山つけ、花の終わりですが、大山蓮華が
2、3の優雅な白い花を付けていました。

 池には大きな鯉が池底のトンネルを出入りし、ウグイも泳いでいます。
平野川の谷水は澄んでいますが、以前見たハヤは見えません。
一羽の燕が上流から下流へ飛んで消えました。

 11時半頃、昼食をいただいてから、改めて句碑を拝見しました。
暮石先生、茨木先生、日野草城や松瀬青々の句碑も見てから、
1キロほど南の平野の水分神社を訪ねました。

       大山蓮華花の終りの静かなる   常朝

       師の句碑を一直線に蜘蛛登る   常朝

       (天好園の山法師:クリックで拡大:以後同じ)
              (大山蓮華)
              (お食事処)
              (松瀬青々:大阪の雪をよしのは春の風)

 平野の水分神社は比較的小さな本殿、拝殿、社務所、倉庫の
ある神社です。昭和58年遷宮の石碑が立っています。
平野川の谷音や鳥の声がときどき聞こえます。

 神社入り口には山の神が祀ってあります。
右手の大杉にはテイカカヅラが白い花を巻き付け、
下にはマムシグサが不気味な紫の花を咲かせていました。

 しばらく散策していると、誰かが河鹿(かじか)が鳴いたと言いました。
境内から谷に向かって耳をすませましたが、なかなか鳴いてくれません。
結局、鳴き声を聞いたのは3人だけでした。

 境内には、天照大御神の遥拝所石塔があり、下に古い狛犬が一頭
おいてあります。

 また、神社の外側には、右城暮石先生の句碑

       合流をはたしての緩冬芒

と、さる3月亡くなられた藤本安騎生氏の句碑がありました。


       河鹿笛待てば谷より風来たる    常朝

              (平野水分神社)
              (右城暮石の句碑)
              (藤本安騎生の句碑説明板)
              (山の神のお供え)

 2時頃、166号線に戻り、帰り道なので、宇陀水分神社を訪ねました。
以前訪ねましたが、ここは、宇陀市菟田野古市場にある古い神社です。
大きな杉に囲まれた境内に、同じ大きさ、形の社殿が3つ横に並んでいます。
鳥居のそばには頼朝が若い頃植えたという杉の二代目が
頼朝杉と名づけられ、本殿左には高さ30メートルもありそうな、
夫婦杉が天を突き、社殿下の細長い庭には擬宝珠の花が咲いていました。
古い燈籠2つには、「あぶない」と書いた札がかけてあります。


       水分の斎庭に擬宝珠の花清ら    常朝

              (宇陀水分神社)
              (夫婦杉)
              (擬宝珠の花)

 3時前、宇陀水分神社を辞して、桜井市の阿部交差点西の天平庵で
小句会後、5時半頃解散しました。
天平庵では、7人座れる我々の常席は、若い女性2人が最初から最後まで
ずっと話しこんでいました。

 梅雨の不安定な天気にもかかわらず、ほとんど雨に降られず、
涼しい吉野の清流や青葉を楽しんだ1日でした。

2014年6月15日日曜日

193.大阪市・住吉大社の御田植祭

「アカシア紀行・俳句」2014年6月14日(土)     前へ   次へ

 梅雨晴れ間の土曜日、いつものメンバー6人で、
大阪市住吉区にある住吉大社の御田植祭を訪ねました。

 車で奈良方面からは、阪神高速の東大阪荒本ICを出て、中央環状線を南下、
長吉長原東交差点を西へ折れて、長居道路を住吉大社南の足立1交差点を北上
阪堺線踏切を越えると、大社の駐車場入口です。
電車では南海線住吉大社駅か、阪堺線住吉鳥居前か阪堺上町線住吉公園前駅
が最寄りです。

 住吉大社は以前のアカシア紀行97にも記入しましが、
住吉3神、神功皇后、などを祀る古い神社です。

 我々が9時40分頃、住吉大社の駐車場の東側の神田に入ると、
すでに30人位の男性が、神田に並んで、早苗を植えていました。

 畦近くの男性に聞くと、御田植祭は13時からだが、
早乙女達が苗をまっすぐ植えやすいように、苗の5列のうち1列位は
前もって植えておく、いわゆる準備作業中とのこと。

 中央部にある、浮き舞台のそばでは、外国のテレビ局のチーム
でしょうか、外人の女性が男性に混じって田植えをしていました。

 男性は、外人女性はOK、OKと言うけれど、写真撮影がOKなのか、
植え方がOKと言うのかわからないと笑っていました。

 そのうち、マイクのテストでしょうか、スピーカーで田植歌が聞こえたり
してだんだん祭の雰囲気が出てきました。
畦の南側には、昔神田を奉納し、芸妓が田植えを奉納したという
新町廓の大きな旗が風に揺れています。
水は井戸水など色々お聞きして、しばらく見学後、まだ11時前でしたが、
昼食を早く済ますため、住吉大社駅前東の廣田屋に行きました。


       大阪の井戸水引きて御田植祭   常朝

       廓の旗大きく立てて御田植祭    常朝


          (住吉大社の反橋:クリックで拡大:以後同じ)
              (神田の浮き舞台)
              (準備の田植え)


 予約時の話では12時半開店予定でしたが、11時前から入店させていただき、
20分程待って名物の「豆ご飯定食」をいただいた後、11時40分頃から
お田植え祭の拝観入場券(御田講講金)を求める行列に並び、12時半頃
一人1000円の入場券をもらいました。 

 入場券には、「綿の花」という赤黄色の紙造花と御田植神事説明書が
付いていました。
神田の北側のテント下の拝観席は招待席の東側、約400人分位でした。
すでに前の席が埋まっていたので、我々は最後部に坐りました。

 スピーカーでは御田植祭の由来や式次第を延々説明しています。
13時すぎ、赤い飾幕と「綿の花」を背につけた斎牛(さいぎゅう)が
菅笠黄たすきの博労に連れられて畦を二周したあと、神田に入って
北西の田を代掻(しろか)きしました。
牛は5才の但馬牛で1ケ月練習したそうです。畦を一周するとき、拝観席から
拍手が湧きました。

 続いて、神事の行列が大きな旗と12人の供奴(ともやっこ)に先導されて
畦を進んできました。
供奴のあと、武者行列、神官、八乙女、楽人、稚児、御稔女(みとしめ)、
植女、大田主(ご神水)、奉耕者(田男)、替植女、田植踊りの早乙女、
住吉踊りの踊子女童(約150人)が続きました。

       拍手受け元気出したる田植牛    常朝

       食はるるより代掻きがまし但馬牛  常朝

              (田植踊りの女童)
              (供奴の練習)
              (武者行列)
              (代掻き)

 その後、浮き舞台で神官のお祓い後、神水を四方に注ぎ、
市女笠の8人の植女(うえめ)から、手渡された早苗束を持って、
8人の菅笠たすき姿の替植女(かえうえめ)が畦に戻り田植えがはじまりました。

 10人位の早乙女の他に、30人位の田男が菅笠、白衣、赤襷姿で、
2反の神田に田植えをします。

 同時に、8人の冠をつけた巫女(八乙女)が舞台に来て
ゆっくりした田舞を始めました。
その後約2時間、田植えと並行して次のような奉納行事が舞台と畦道で
繰り広げられました。

  神田代舞(みとしろまい:美しい芸妓の舞台舞)
  風流武者行事(高下駄の侍大将による舞台の舞)
  棒打ち合戦(甲冑武者と紅白の雑兵が畦で棒を打ち合う)
  田植え踊り(替植女の太鼓、謡いに舞台で早乙女が踊る)
  住吉踊り(謡に童女150人が舞台と畦で踊る)


 なかでも、棒打ち合戦の前の少年武者行列では、
小学校1年位の兵が、行列最後に10メートルも遅れても気にせず踊り切って、
拝観席から大きな拍手が湧きました。

 また、住吉踊りでは、小学生くらいうの女童が、団扇を左手で叩きながら
リズミカルに踊る姿はかわいいでした。


       投げられし早苗のしぶき畦を越す  常朝

       浮き舞台下も苗植う御田植祭    常朝

              (田植え)
              (棒打ち合戦)
              (住吉踊り)

 3時半ころ、田植えも踊りも含め、お田植え祭が宮司の挨拶で無事終わり、
我々は住之江公園近くのファミリーレストラン「さと」で小句会後、
6時過ぎ解散しました。

 日差は少し暑いくらいでしたが、涼しい木陰にときどきは良い風も来て、
青葉の住吉大社で、盛り沢山の行事の御田植祭をゆっくり楽しめました。
また大都市でこのような格式と内容のある御田植祭があるとは驚きでした。