「アカシア紀行・俳句」2024年8月12日(月) 前へ
5月の良い天気の日、いただいた入場券で興福寺の薪能を参観しました。
2024年度の薪能は初日5月17日で興福寺南大門では午後5時半から観世流の「歌占」、火入れ(薪の火入れ)ののち、狂言「延命袋」、金剛流の「融」(源融)となっています。(2日目は18日(土))
源融は今年(2024)のNHK大河ドラマ「光る君へ」の源氏のモデルといわれる平安時代の左大臣で、紫式部の約100年前の人です。嵯峨天皇の皇子でありながら臣籍に下り、六条河原に邸宅をもち、塩釜の風景を模した庭を造ったので、河原大臣とも言われているようです。(百人一首の 「陸奥のしのぶみじずり 誰ゆえに 乱れそめにし われならなくに」 の作者)
私は、暗くなってからの薪能を見たかったので、まず猿沢池のほとりで軽い夕食(弁当)をとりました。
池面を燕が飛んでいます。どこの国かはわかりませんが、多分東南アジアの若い女性も何人かベンチに座ったりして、五重塔や燕を見ていました。薪能の太鼓や笛が寺の方から聞こえています。
興福寺の五重塔は120年ぶりの修理工事で素屋根(覆いの屋根)を建設中でこれから約7年塔を見れなくなるようです。
薪能聞こゆる池に夏燕 常朝
国籍のわからぬ娘らと燕見る 常朝
猿沢池 五重塔
弁当をいただいてから52段の石段を登り、狂言の途中から席に入りました。
席に着くと、周囲は外国人夫婦らしき人達も含めて、若い人たちも結構参観しており、しばらくすると300人位の席はほぼいっぱいになりました。
狂言が終わり薪の火入れがあって、能がはじまりました。
ちょうどその頃、能を寿ぐように西の空に細く紫雲がたなびきました。
まず、諸国巡りの僧が都に上がり、六条河原の院(融の邸宅跡)に着くと、老翁が陸奥塩釜を模した景色を眺めて昔を回想しています。僧が何者かと問えばここの汐汲みだという。
老翁は大臣亡き後、浦もあった庭も荒廃したといい、涙を流しますが京の名所を僧に教えます。
老翁が去ったあと僧は旅寝すると大臣の融が夢に現れ游舞の昔をしのび、舞ううちに明け方となり、大臣も消えていきます。
薪能の舞台 老翁(融)(薪能保存会資料より)
妻も少し遅れて入場し、参考にと家にある謡の本の中から「融」を持ってきましたが、
若い人達は、スマホで能のあらすじなどを見ているようです。
昔を偲ぶ幽玄な古典芸能の舞台を味わうことができました。